◆封神台対談◆

「えー、ガサラキの対談が好評なようなので、対談を封神でもすることになりました。」
「おぼんこんち。あのガサラキ降誕祭がググール検索にひっかかるなんて、思いもよらなかったですわ。はい。ということで、まずは聞仲×紂王の思い出から語りましょうか。」
「あ、聞仲×紂王ねー。いや、アンソロジー本で初めて知ったんですが、このカップリング。すごい好きな人多いんだよね。」
「多い多い。いわゆる、『主従もの』に分類されると思うんですけど、中国の巨大な国を背負ってやおいをやるというところに、皆さん萌えてらっしゃるようですね。」
「安能版で『そっと抱き上げてほお擦りをした。』とか書いてあるからねー・紂王の子供時代に聞仲が。あの一行で妄想が生まれるんですよね。でもフジリューはあんまり聞仲×紂王じゃないですよね。」
「『このままでは予は壊れてしまうかも知れない。』の場面とか、聞仲が封神される場面なんかは紂王のところへ行って礼をするから、まあ聞仲×紂王なんだけど。私はやっぱりノーマルで、紂王×妲己だから。」
「紂王×妲己はフジリュー、すごい工夫?して描いているよね。いやだからさー、評論なんかでバラしてますけど、妲己のブスなところへ現われる狐って、どう考えても紂王だよね。」
「王氏の時代も紂王だし、妲己と合体してからも紂王。」
「だいたい何代も前から取り付いていた、とかね、そんな非科学的なこと信じちゃいけない(笑)。」
「聞仲の好きだった朱氏だって、時空を圧縮したら、紂王の母親。」
「もう封神は嘘のつきかたがすごいからねぇ。その嘘に酔いしれている人には、『何百年と生きていた、彼は仙人であった。』なんだろうけど。」
「そうそう!でね、それ書いてフジリューにファンレターの鉛筆書きの同人誌送ったんですよ私。そしたら、サクラテツ対話編で、すっごい下手な絵を描く太公望にされちゃって返されちゃった(笑)。それは極秘事項なんですよ。紂王がブスの妲己ちゃんをこの場面で強姦していたとかね・・・・それは少年誌では言ってはいけないことだから。」
「『正室の姜妃の方が美人だ!』って一端言っておいてから、バーンと現われる。で、ことがすんで何食わぬ顔して、玉座に座っている。アレは最初読んだ時、意味が全然わかんかなったんですけど、何回か読んでいったら、ああ、そういうことか・・・と。」
「まあそれは、普通に読んでいる人には、紂王は妲己にたぶらかされました、でいいんだけどもね。」
「紂王ってフジリューのマンガでは、主体性のないなよなよしたどうしようもない男として描かれているんですけど、史実なんか読むと彼はもう『信長』ですよ。『王家の風日』って宮城谷先生の小説だと、『殺してもあきたりぬヤツ』とかすぐ出てくる。ホント、すっごく怖い。」
「だから信長と似たことやってますね。信長の場合は黄金のドクロ酒だけど・・・・。」
「紂王の場合は、人間ハンバーグとか、人間なますとか。」
「それ考えるとげんなりもするんですけど。でも紂王ってそれを補ってあまりある、なんか人間性ってのが彼にはあるんですよ。周に負けても彼は立派だったのよ、って人々に錯覚させる何かがあるね。」
「だから作家の人も、あんなマイナーな時代なのに、小説いろんなバージョンで書いてくれてますよね。」
「でも何作か読んでいったら、やっぱりフジリュー版のあやつり人形みたいな紂王は、史実とは違うと思いますね。」
「フジリュー版っていうのは・・・なんていうんだろう、史実の紂王の『慢心』の部分がみんな変身した妲己にいっちゃってて、ブスの妲己の居場所がないって状態ですか。」
「そうそう。それは昔からある『封神』の原本に忠実なんだろうけど、史実から言えば紂王の分身ですからね、あの『○○よん』って言っている妲己って。」
「紂王と一心同体ってセリフありましたけど、実のところは紂王の完全なるあやつり人形で。」
「マンガでね、『これからお世話になるわん。よろしくん。』って言ってる妲己の場面で、群臣がみんな妲己に魂抜かれているのに、一人紂王だけ『ヤバイなあ』って顔しているんですよ。」
「それは自分だからだよね。自分の魂魄を妲己に注入して、別人にしちゃってるわけだから。」
「でもフジリュー、ちゃんと描き分けてますよ。優秀ですよね。読者からの反応がきっと面白かったと思いますよ。みんなには逆で、紂王が妲己のあやつり人形になってて、フンチュンにしか見えないわけだから。」
「うん。それでね、そう考えると、昔の時代の妲己って聞仲とすごく仲が悪いんですよ。金ごう島でライバル同士でさ。これって、私は聞仲と紂王の正しい関係だと思いますね。優秀な将軍なんだけど、自分が育てた王にずけずけ進言するという、王権をないがしろにしかねない将軍。まあすぐにやおい考える人には、どうしてそうなるのか、って思われると思いますけど。」
「紂王、本当はキツネつきの性格だからね。それは丸くなってやおいを聞仲とやる、って感じではないよね。」
「肉体的にはもてあそばれても、精神的にはもてあそんでる状態かな。やおいだと。『夜叉鬼伝』の菊池先生の、秋せつらとなんか医者のカップルありましたね、ドクター・メフィスト。アレですよ、絶対。なかなか聞仲は、秋せつらの絶対者の『私』に会えない。紂王の本性にはやおいしていても会えない、っていうか。それは紂王の場合ノーマルで残酷だから。で、その本性が出た人間ハンバーグの伯邑考なんか見て、聞仲は青ざめるという。」
「そういう聞仲の苦悩、みたいなものはやおいで書いている人は少ないですね。」
「あー、いないねぇ。なんかラブラブが多いですね。聞仲×紂王は。普通のボーイズラブの方が一般的でヒットもするし。でも深くないですよ、それは。『予は殷の王なのだ。つらい。悲しい。』で抱き合うだけだと・・・・。」
「まあフジリューの紂王見てみんな書いているから、仕方ないんですがね。」
「ところで『夜叉鬼伝』、あの小説はもともとは『魔王伝』から続いているんですが、絶対この『夜叉鬼伝』は封神からキャラを考えてますよ。妖琴弾きの吸血鬼は、琴の名手の伯邑考でしょう。」
「正室の姜妃があの小説の姫っていうものすごい女吸血鬼で、姫の侍女の秀蘭が妲己でしょうね。正妻対妾ということで、姫の吸血鬼に鞭打たれるという設定。妲己は紂王よりは優しい伯邑考のことも少し好きだったから、あの小説ではそっちとカップルになっている。まああの小説も姫が妲己で妹喜だったという設定ではあるんだけど。」
「じゃあ紂王の場合のカップリングは、秋せつらと人形娘ということで。人形娘=妲己。やっぱり人形視してるんだ。しかもロリが入っている。(笑)でもこの場合、特筆すべきなのは、長夜の宴なんかやっていたというのに、秋せつらと人形娘にはセックスシーンがないこと。結構これは萌えだな、と。なんでもすぐにセックスに結びつけるのは、芸がないから。」
「いやだからさー、前に伯邑考とやっちゃった妲己ちゃんっての短編で書いたんですけど、ネットで全削除されちゃってさぁ。紂王ってでも、安能版の胡喜媚のくだり読むと、ほんと中学生みたいな恋愛しているんですよ。一言も口がきけないで、ただ手を握るだけ、とか。そりゃその後セックスしているんだけど、これだと不器用っていうか。だからなんというか、紂王は嫉妬で伯邑考を殺すんですよね。」
「だろうねぇ。人間ハンバーグですからね。持ってきた品物が気に入らなかった、殺そうとたくらんでいた、とか、それはどーでもいい理由ですよ。そこまで紂王にやらせた理由って、嫉妬だろうな、と思います。」
「テレビ版では実際に伯邑考が妲己を押し倒していて、なかなかやってくれてました。」
「そういうところだけはね(笑)。ま、後半だいぶ絵が綺麗な回もありましたが。」
「しかし、フジリューって一見では絶対わからないようにこのマンガ描いていて、その才能はすごいと思いますよ。隠匿の仕方がすばらしい。」
「少年ジャンプでこういうマンガが出てきたってことが、面白いことだと思いますね。こういう隠匿の仕方は、むしろ少女マンガですよ。」
「最後に。紂王×太公望ってカップリングもあるんですけど、これについては。」
「あ、最後の巨大妲己に抱かれて、『太公望ちゃん・・・・』って言われる場面とか。『まだ消えてはならん。』とか。」
「いやいや、太公望が初対面で紂王に言う『万歳万歳万々歳』って、安能版の妲己のセリフなんですよ。紂王に初めて会ったときのセリフで、それで紂王は妲己に魂奪われてしまうという場面の。」
「まあフジリューはかなり、そっちに比重おいているよね。聞仲×紂王は、なんか余技って感じがする。本筋じゃないから、それならむしろ太公望とのカップリングのほうが、封神のテーマに近いでしょうな。評論のほうはそう締めくくりましたし。」
「まあ主人公ですし。少年マンガですし。でもやっぱり、ノーマルカップリングのほうが面白い。やっぱり紂王×妲己ですよ。」
「フジリューはきっと『セーラームーン』とか好きだから、妲己をあんな風なおバカな女の子風にしちゃったんでしょうね。あの調子で王宮で権力を握るって、まあ夢物語ですよ。それではなんか話題がどうどうめぐりになってきましたので、この辺にて。」
「おあとがよろしいようで。『こんなわけのわかんない対談するんじゃねぇよ!』って気の短い人にはゴメンナサイ・・・。」

てけてけてけ♪・・・・・・・・・・・・・・・

↓ラクガキ二点。楊ぜんと紂王です。模写なんだけど、元の絵ぜったいわかんねー。(笑




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